特別講演

九州経済産業局デジタル経済室
三小田 昌弘 様


経済産業省のDX推進とサイバーセキュリティ対策の概要

九州経済産業局デジタル経済室の三小田昌弘氏から、経済産業省のDX推進とサイバーセキュリティ対策についての説明がありました。

また、大分県情報サービス産業協会の会員は、企業のDX推進を応援する役割を担っており、会員のお客様に対する営業方法や営業で使用できるツール、お客様に活用していただけるような施策や補助金制度など紹介していただきました。

DXの定義と日本企業の現状

DXは、企業がビジネス環境の激しい変化に対して、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを元に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革すると共に、業務そのものや組織、プロセス、企業文化、風土を変革し、競争上の優位性を確立することです。キーワードは「変革」です。

例えば、生成AIを導入したり、データ分析だけだと単なるデジタル化の段階に留まっているということになります。

経済産業省としては、デジタル化にはデジタイゼーション(Digitization)とデジタライゼーション(Digitalization)の二つの局面があるとしています。

デジタイゼーション(Digitization)の例でいうと、「お客様との連絡手段をFAXから電子メールに切り替えた」というような企業様。これは、DXに行く手前の段階になります。

デジタライゼーション(Digitalization)の例だと、在庫情報システムによる在庫量、発注量の管理などとなります。

そこから更に、蓄積されたデータを活用して、新商品の開発や、新しい販路の開拓、付加価値の構造といったような企業風土ができるレベルまでいったものが「DX」という形になります。

また、中堅中小企業のDXに対する理解度アンケートでは、約半数がDXを「理解している」または「ある程度理解している」と回答しているものの、多くの企業がDXを業務効率化やコスト削減の手段としてのみ捉えており、本来のビジネスモデル変革や企業文化の変革という側面が理解されていないという課題が浮き彫りになりました。

日本のデジタル競争力は低下傾向にあり、世界のデジタル競争ランキング2024では日本は67カ国中31位と低迷しています。これが現在の日本企業のDXの現状です。

デジタルガバナンスコード3.0と企業のDX推進政策

企業様のDX推進についてですが、経済産業省では、DX経営による企業価値向上に向けて、経営者が実践すべき事柄をまとめたもの「デジタルガバナンスコード3.0」を学んでほしいという強い想いがあります。

これは、経営ビジョン・ビジネスモデルの策定、DX戦略の策定、組織づくり、デジタル人材の育成・確保、ITシステム・サイバーセキュリティ対策などの柱で構成されているものです。

会社の経営ビジョンやビジネスモデルの策定が連携できず、会社が進む方向とDXの戦略が違う方向に進むと、従業員はどちらについていけばいいのか迷います。そういう意味では、経営ビジョンとDX戦略の連動が非常に大事です。

また、「デジタルガバナンスコード3.0」の手引きを利用することで、今現在、お客様の事業のDX推進はどういう状況なのか、ベンチマークを活用して数値化することで、お客様にDX推進指標を無料で提供できます。

DX認定制度とそのメリット

DX認定制度とは、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)と経済産業省が実施しているもので、DX推進のビジョン・戦略・体制等が整った事業者を認定するものです。

DXの取り組みを行っている企業様だけではなく、これから導入してDXに取り組もうという準備ができた段階で申請ができます。

認定を受けることで、ロゴマークの使用、中小企業を対象とした金融支援措置、人材育成の訓練に対する支援、DX銘柄及びDXセレクションへの応募資格などのメリットがあります。

また、DX認定を取得するための一番のプロセスは、自社の状況や、従業員とのやり取りが非常にシームレス(異なる部署とスムーズに関わりあえている状態)になっていい機会になった、という意見がありました。

DX支援ガイダンスも公表されており、こちらは、支援機関や士業、金融機関、お客様に対して伴走支援を行う事業者の方、商工会議所の方なども対象になります。 さらに、九州経済産業局のホームページには、様々な産業とITの組み合わせに関する教育用動画(30分×10本)掲載を掲載しています。こちらは、教育現場での活用や、営業担当者が営業先の購買担当の方とセッションの入口として使用したなど、そういう話もあるそうです。

デジタル人材育成の取り組み

2026年度までに政府全体で230万人のデジタル人材を育成する目標を掲げています。経済産業省だけではなく、文科省やデジタル庁などと連携しながら取り組みを進めております。
各省庁の取り組みとしては、経済産業省のデジタル人材育成プラットフォーム。厚生労働省の職業訓練のデジタル訓練重点化、文部科学省の数理・データサイエンス・AI教育プログラムの認定制度です。
ただし、デジタル人材を育てて終わりではなく、その人材がきちんと業界に飛び立ってもらうことが一番注力しなければならないところです。
体系的なデジタル人材育成の取り組みとしては、「スキルの可視化」「学習コンテンツ・実践的教育」「能力保証・効果測定」の三つを柱に人材育成を図っています。

デジタル人材育成プラットフォーム

三層構造で用意されていて、第一層は無料で利用できる人材育成カリキュラ「マナビDX」というポータルサイトを提供しています。レベル1は、初歩的な知識。レベル2はプロマネの入門や、アジャイル基礎、AI基礎、Pythonの初級編。レベル3になると、機械学習の応用。レベル4になるとデザインや深層学習などの講座が視聴できるようになっています。

第二層は「マナビDX Quest」という架空企業の経営課題に対してデジタル技術を使用して解決する参加型の教育プログラムです。例年5月頃に募集をかけ、8月から11月くらいに実施しています。参加費は無料ですが、結構難しい課題を設定しています。全国からの参加メンバーと5人1組くらいのチームを作って、お互いにチーム内で学び合いながら進めていきます。

第三層は「地域企業協働プログラム」で、実際の企業の経営課題に対してデジタル技術を使って解決を図るプログラムです。第二層との違いは、実際の企業の経営課題に対して、デジタル技術を使って解決を図っていくプログラムになります。第三層ですと、実際に経営者の方と直接、電話やメールでセッションする機会があるので、企業の中での稟議の通し方や、オーソライズするためのステップの難しさなどを技術の習得と共に、プログラムの中で学習できます。

これらのプラットフォームは、企業の従業員のスキルアップやコミュニケーション能力の訓練、人材育成に活用できます。

また、人材育成のトップゾーンでは、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が20年以上続けている「未踏事業」の地方版「AKATSUKIプロジェクト」というものもございます。

サイバーセキュリティの現状と対策

サイバー攻撃の現状について、ランサムウェアによる被害が非常に多く、サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃が増加しています。

中小企業へのサイバー攻撃の実証実験では、1,064社の参加企業で約910件のアラートが発生し、128件が重大インシデントになる可能性がありました。

特徴的な事例として、古いOSの使用、私的端末の業務利用、ホテルのWi-Fi利用、サプライチェーン攻撃などです。

また、中小企業向けのセキュリティ対策として「サイバーセキュリティお助け隊サービス」やIT導入補助金の「セキュリティ推進枠」を創設していること、サイバーセキュリティ対策の促進として、各県でセミナーやロールプレイ演習を実施しています。

中小企業向け補助金メニューの概要

検索サイトで「中堅・中小企業成長投資補助金」と検索してみてください。お客様から「デジタル化したい」「DXしたい」「補助金、何かない?」などの声に応える形で補助金の概要を作成しました。お客様の新規開拓に利用していただければと思います。

中小企業・小規模事業者向けの経済対策補正予算として総額5,601億円。既存基金の活用等も含めて1兆4万規模の予算を用意しています。

お客様と実際に面談し、「売り上げ規模はこれぐらい」「投資レベルはこれぐらい」と咀嚼しながら、自分の頭の中でマトリクスにはめながら、こういう支援メニューがありますよという風に提案しています。

売り上げ拡大がメインなのか、高付加価値化なのか、省力化、デジタル化なのか、新事業展開なのかで分けています。一番トップ層、打ち上げ拡大で売り上げ規模も投資規模も一番大きいのは「中堅・中小成長投資補助金(上限50億円)」です。

その他の具体的な補助金として、「中小企業成長加速化補助金(上限5億円)」、「ものづくり補助金」、「省力化投資補助金」、「IT導入補助金」、「中小企業新事業進出補助金」、「小規模事業者持続化補助金」、「事業承継・M&A補助金」などもございます。

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本日は、 ご清聴ありがとうございました。

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