第37回「OISA技術交流会」開催
第1部
講演「量子コンピュータの今と今後に向けて」
富士通株式会社 富士通研究所 量子研究所 シニアディレクター 近藤正雄様より、「量子コンピュータの今と今後に向けて」と題してご講演をいただきました。社会やビジネスに革新的な変化をもたらす量子コンピュータの歴史についての理解が深まるお話から始まり、アニーリング方式やゲート方式といった量子コンピュータにおける計算方式の解説や、超電導や量子もつれなどのいくつかの専門的な用語についての説明も織り交ぜた内容で、量子コンピュータの特性及び仕組みを身近に感じることが出来るご講演でした。また、富士通と理研による量子コンピュータの実用的な研究のご紹介と同時に、ハードウェアの開発の困難等量子コンピュータが抱える課題も提示され、量子コンピュータの今後の展望も含めた奥深い講演となりました。

近藤 正雄 様
第2部
技術研究会発表会
AI 駆動開発部会
「~人+ AI で創る~ プロダクト開発シミュレーション」
AI エージェントを活用した新しい開発プロセスを実践・検証しました。近未来の開発手法の体験を目的に、AI による自律的なコード生成・テスト・ドキュメント作成などの自動化に取り組み、開発はTDD(テスト駆動開発)を基本とし、仕様書・静的チェック・テストという「ガードレール」を設定することで、品質担保・誤った実装の防止を図っています。AI 導入で実装スピードは向上しましたが、人的レビューがボトルネックとなるなどの課題も顕在化しました。開発ルールやドキュメントの明確化やAI フレンドリーな情報基盤の整備が求められており、実践結果では作業効率や品質向上、フィードバックループの短縮、より細かな設計の重要性など、多くの気づきを得ることができました。

Aチーム
AI エージェント部会
「 AI エージェントは旅のコンシェルジュになれるか ~速度と体験の比較から見える未来~」
AI エージェントを活用した旅行プラン作成の効率や体験の比較をしました。旅行計画(2026/1/25-26 レディ・ガガ東京ドームライブ参加、3人・予算15 万円・飛行機/ 新幹線利用)をAI と手動でそれぞれ作成し、所要時間や体験面の違いを検証しました。AI エージェントによる計画は所要時間が短く効率的ですが、計画を考える楽しさや「内なる余白」が失われるジレンマを指摘しています。効果的なエージェント運用には、目的の明確化や具体的な手順・制約の設定、必要情報の提供が重要であるとまとめ、人とAI が共生するためには情報の渡しすぎや考える余白を残すといった小さな選択が求められると提言されており、「便利さ」と「体験の質」について課題を投げかけています。

Bチーム
量子コンピューティング部会
「量子コンピュータのゲート方式による夫婦の家事分担の最適化問題」
ゲート方式を使った現実的な問題への応用例として「夫婦の家事分担の最適化」を取り上げました。まず量子コンピュータと古典コンピュータの違いや、量子ビット(重ね合わせ・量子もつれ)および量子ゲートの基本的な仕組みについての解説と計算の流れや各ゲートの役割(Xゲート、CX ゲート、CCX ゲートなど)を紹介し、データベース探索の代表的な量子アルゴリズムであるGrover のアルゴリズムを実社会の課題解決へ応用する流れを解説するとともに、具体的な家事タスクを例に「どのように分担の最適化を量子コンピュータで実現するか」を考察しました。最終的に、量子ゲート方式による組み合せ最適化がいかに効率的であるか、その社会的価値やアプローチ方法を示しています。

量子コンピューティング部会
まとめ
今回の3テーマを通じて、現場での実践的な応用や社会課題へのアプローチを模索しました。「~人+ AI で創る~プロダクト開発シミュレーション」では、テスト駆動開発(TDD)環境下でAI エージェントと協働する実践を通じ、開発効率や品質向上、レビュー工程の課題、AI 協調の未来像について言及しています。「AI エージェントは旅のコンシェルジュになれるか」では、AI による旅行プラン作成の効率性や自律性だけでなく、人間ならではの“楽しみ”とのジレンマやAI 社会の「内なる余白」の重要性が語られています。「量子コンピュータのゲート方式による夫婦の家事分担の最適化」は、量子アルゴリズムの社会課題解決への応用可能性を具体例とともに示しました。全体を通して、人とAI(あるいは量子技術)が協働し新たな価値や効率化を生み出す過程で、技術的限界や社会的インパクト、楽しみ・余白の意義にも目を向けた、現代的な問題意識が浮き彫りになっています。
